研究概要 |
構造物の振動を抑制する方法として,これまでは主に受動的制振法が用いられてきたが,設計パラメータや系の特性の変動に対して制振性能が著しく低下してしまうという問題がある.それに対し,外部からエネルギを投入して制振する能動的制振法は,コントローラをロバストに設計することにより制御対象の変動に対しても制振性能の劣化を小さくすることが可能である.本研究者らは能動的制御手法が送水管の不安定現象に対しても非常に有効であることを示してきた.また,アクチュエータが発生可能な操作エネルギに拘束条件を有するコントローラを設計し,拘束条件の違いが送水管の不安定現象抑制にどのように影響するかを考察してきた.しかし,これらの方法では,ある固定された流速に対してコントローラを設計していたため,制御による限界流速の向上に関しては限界があった.送水管の動特性は管内流速をパラメータとして変化するから,流速変化に応じてコントローラを連続的に変更できれば,より高い流速でも制御が可能になる. 本研究では,このような制御を実現するため,ゲインスケジューリングの手法の一つであるパラメータ凍結法を採用し,送水管の不安定現象の抑制を試みた.はじめに,Galerkin法により送水管の集中定数モデルを管内流速の関数として求め,次いで,複数の固定された流速値に対してLQG理論によりコントローラを設計し,得られた複数のコントローラを管内流速に応じて補間する.得られたコントローラを用いて,シミュレーション及び実験を行った.その結果,本研究で得られたコントローラによって送水管に生じる不安定現象を安定化可能であることを確認した.また,スケジューリングコントローラを用いた場合,その設計流速区間内であれば,送水管の流速の上昇に対しても閉ループ系は安定を保ち,限界流速を大幅に向上させることが可能であることを明らかにした.
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