研究概要 |
1993年に研究代表者らによって導かれた動吸振器による索道搬器の制振の理論をもとに,円弧軌道の上を質量体が走行する実用動吸振器が開発され,多くのスキーリフトやゴンドラに装着されてきた.その固有振動数は軌道半径で決まり,調整することはむずかしい.そこで,V字形,U字型のパイプのなかに水などの液体を入れた動吸振器について検討した.これだと,固有振動数は液体の量で調整することが可能である.まず,ゴンドラを模擬した振り子にV字形液体動吸振器を取り付けた場合について理論および実験で検討した.理論的に動吸振器の構造および取り付け位置と制振性能の関係を明らかにした.そして,動吸振器の最適な固有振動数と減衰係数を求めた.動吸振器を振動の中心,すなわち支点から固有周期で決まる等価振り子長さだけ下方の点,に取り付けると制振効果はない.そして,それより上下に離れると,その距離の2乗に比例して制振効果が現れる.また,動吸振器の構造としては,V字角のサインの2乗に比例する.すなわちVの角が広く,水平のパイプに近いほど制振効果は大きい.パイプの両端にノズルを取り付け,通過する空気の抵抗にて減衰を得た.この方法は簡単であるが,速度の2乗に比例した減衰が得られるので,減衰係数に振幅依存性が生じる.そこで,粘性の高い液体として水とグリセリンの混合液を用いた.実験では両者とも良い結果が得られた.そして,2人乗りリフトにV字形パイプの液体動吸振器を設置し,3周期でリフトの揺れを数分の一に減少させることができた. つぎに,U字管液体動吸振器を用いて,船とつり橋のローリングを制振を検討した.ゴンドラと同様に理論および模型実験にて,動吸振器の取り付け位置および構造と制振性能の関係を導き,両者とも実用に適することを明らかにした.
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