研究概要 |
本研究では,基礎から振動を受ける構造物の振動応答が入力の方向によってどのように変化するかをモード解析の観点から考察し,構造物の動特性の方向特性を明らかにしている. 第一に,構造物のモード特性の一つとしてモード主軸を提案し,モード特性の方向特性を明らかにしている.これによれば,基礎の加振方向がモード主軸に平行な場合はそのモードの応答は最大となり,逆に加振方向がこれに垂直な場合はそのモードは全く励起されない.このように,モード主軸により固有モードの方向特性が明確に定義された.また,モード主軸の方向はその固有モードの重心の移動方向と一致するという事実も明らかにされた. 第二に,方向は定まっていないが入力の性質が明らかな場合に,どの方向に入力が作用した場合に応答が最大になるかを表すものとして,応答主軸が定義された.構造物の応答は,一般に複数の固有モードの重ね合わせで表されるために,応答主軸の方向とモード主軸の方向は一般には一致しない.また,モード主軸とは構造物固有の特性であるのに対し,応答主軸は入力と系の双方に依存する特性として定義される. 最後に,はり構造物を対象として,その方向特性を明らかにしている.まず,3軸加振台を用いて3方向基礎入力に対するFRFを測定し,基本的な固有モードに対応するモード主軸を明らかにしている.次に,任意周波数の正弦波入力を想定した場合の応答主軸を求め,応答特性が入力の方向にどのように依存するかを明らかにしている.以上により,本研究で提案したモード主軸と応答主軸という新しい概念が,構造物の設計にどのように役立てることができるかを示すことができた.
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