研究概要 |
人間中心の自動化を実現するべく,人間と機械の間に介在してその間で交わされるインタラクションを観察したり自らがインタラクションを重ねながら,単純な刺激と応答による条件づけの学習に始まり,いくつか先の段階を正確に予測する能力を段階的に獲得していくこのできる能力を備え,人間-機械の共存下で協調を創出していくことのできる知的システムの構築が求められている.そこでは雑多な作業環境の中から適宜注視点や焦点を絞り込むことができ,必要に応じて人間の作業を代行したり人間との協調的な関係を組織化し維持していけなければならない.以上のような研究背景をもとに本研究では,複雑大規模な工学システムの監視にあたる人間や,人間と共存する場で活動を求められる搬送ロボット・介護ロボットのようなマシンシステムが,他者を含む作業環境との間で相互作用を繰り返す過程において新しい認識世界を常に創造しそれに基づいて新たな行為を発動できる,いわば環境との自発的な同調を可能にする人間-機械共存下での協調系の設計原理に関する究明を行なった. 第1年度は人間作業者による熟練技能の工学モデルの開発として,とくに雑多な対象のなかから的確に意味ある情報のみを選別し抽出できる環境認識と概念生成の能力,さまざまな形態の知識の動的合成と学習,さらにはその効率的な運用に関わる部分の実現,の諸側面に対して焦点をあて研究を行なった.とくに近年創発計算の手法として注目を集めている遺伝アルゴリズムや遺伝プログラミングの学習手法を用いて,雑多な情報を数多く含む環境から的確に意味ある情報のみを選別し,共通な反応を出力するための環境を適切に見たてる概念生成と高度にコーディネートされた流暢な振る舞いの組織化を可能にする方法論の確立を目指した.第2年度には前述のモデルの具体的応用として,変動する環境に適応するための自律移動ロボットの行動形成と知覚情報を動的に更新することで人間の『作業環境』への協応を促す知的インタフェースシステムを対象として上記研究課題を遂行した.
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