研究概要 |
近年,電場によってそのレオロジー特性が制御可能なER流体の一つとして,高分子液晶が開発された.この高分子液晶は,電場によってニュートン流体としての粘性が制御可能であり,その特性は線形性が良く,精密な制御に適する.そこで,本研究ではこの高分子液晶を封入したダンパを用い,制御状態に応じた適切なダンピングを機械システムに対して与えることにより,より高精度な制御が可能となることを実証した.平成9年度および平成10年度を通じて得られた成果は以下のとおりである. (1) 均一系ER流体の一つである高分子液晶は,粒子系ER流体と異なり電極間距離が微小であっても動作可能である.微小な間隔を持って対向する電極間に高分子液晶を封入し,微小な変位に対しても有効なダンパを構成した. (2) レーザ距離センサおよび高分解能ロータリーエンコーダを用いて高速・高精度位置決め制御実験を行った.高速移動時には,ERダンパへの印可電圧を制御してダンピングを最小とし,精密位置決め時にはダンピングが最大となるようにする.制御器はロバスト制御理論により決定した. (3) 外力を推定してフィードフォワードすると,外力の影響を受けにくいシステムが構成できる.ただし,駆動系に弾性を有するシステムにこの方式を適用すると系が振動的となる.このようなシステムにERダンパを付加すると,サーボ剛性が非常に高くかつ安定性の良いシステムが得られることを実験により示し,その特性を解析した. (4) ダイレクトドライブ方式のサーボ剛性の向上は,高精度なメカトロニクスシステムを構成するための今後の一つの大きな課題である.これを達成するためには,ERダンパの使用が有効な方法であることを実験および解析により示した.
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