研究概要 |
本研究は,多剛体物体の連鎖からなるマニピュレータと環境との衝突を,単一質点と環境との衝突としてモデル化し,衝突点から見たマニピュレータの等価質量(衝突点等価質量)とはねかえり係数を実験的に求めて,衝突モデルの妥当性を検証すること,およびこれを衝突運動の実際的な評価と衝突軽減制御へ応用することを目的として行われたものである.3リンク平面マニピュレータを製作して衝突実験を行い,衝突点等価質量とはねかえり係数を実験的に求めた.それらの結果より,以下の知見が得られた. 1. 衝突点等価質量の理論値と実験値とは,マニピュレータの衝突姿勢とリンク上の衝突点位置の広い範囲にわたって,良好に一致した.よって,衝突点等価質量は衝突時のマニピュレータの姿勢とリンク上の衝突位置から計算によって容易に求ることができる. 2. 多剛体物体の衝突点におけるはねかえり係数は,物質定数のような一定値ではなく,リンク上の衝突点の位置により複雑に変化する.マニピュレータの最終リンクのはねかえり係数は,関節を打撃の中心とする打撃点において最大となり,この点から離れるほど小さくなる. 3. マニピュレータの手先のはねかえり係数は,ほぼ0.5から0.65の範囲の値をとり,マニピュレータの姿勢の影響は小さい. 以上より,衝突点等価質量とはねかえり係数を用いた衝突モデルを使って,マニピュレータと環境との衝突現象を簡便に予測できることが判明した.また,この衝突モデルをマニピュレータの動力学モデルと組み合わせることにより,衝突を含むマニピュレータの運動を系統的に議論することができ,衝突を含む組立作業における衝突力軽減制御などを容易に評価することができる.
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