研究概要 |
本研究は,電界放射電子顕微鏡を用いて電界電子放出点を映像化すると同時に,その点に紫外線を照射して光電子放出を生じさせた場合の電子放出点の像の変化を観測する. 研究初年度である平成9年度には以下の点が明らかにされた. 1. 電界電子放出素子を用いて電界放射電子顕微鏡の動作確認および調整を行った. 2. その電界電子放出素子で得られた像は,細かに振動していることが観測された.これは,電子放出点が移動していることを表しているものと考えられたが,今後詳細な観測が必要である. 3. この顕微鏡を用いて,真空ギャップ用の無酸素銅陰極表面に電界電子放出点が観測された.その電子放出点は,複数個の電子放出点から成ることが見出された. 以上の実験結果を基に,平成10年度に真空ギャップ用電極表面上の電子放出点の観測を行った.その結果,以下の点が明らかとなった. 1. 紫外線をアルミ線(線径50μm)に照射し,得られた光電子放出像より,電界放射電子顕微鏡の倍率を校正した. 2. 無酸素銅電極表面上の電子放出点の観測から,巨視的には1点に見える電子放出点が,複数の放出点から構成されていることが判明した. 3. 電解研磨が施されたアルミ電極を用いて放電前後の電子放出点の変化を調べた結果,その様相が大きく変化することが明かとなった. 以上のように,本研究により,実用電極表面上の電子放出点の様相を拡大して観測することができるようになり,電極表面処理が電子放出特性に及ぼす影響を明らかにすることができるようになった.
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