研究概要 |
新しく開発した系統連系インバータは,19キロヘルツの絶縁型高周波リンクに新たに設計・制作したトランスー体型T-LCL形イミタンス変換器を取り付け,定格出力3キロワットである。従来の連系リアクトルは不要で,フィードバック制御なしで歪み率3パーセントの正弦波電流出力が得られ,系統電圧の波形歪みおよび振幅の影響をほとんど受けない。系統電圧をステップ状に変化させたとき,正弦波電流の波形および振幅はほとんど変化せず過渡振動も0.1ミリ秒で消滅し,優れた過渡特性を示している。効率は,総合で90パーセント以上である。 イミタンス変換器はジャイレータとも呼ばれる。その基本特性に関しては,5種類の共振形イミタンス変換器について周波数特性,電圧電流変換特性,効率特性を明らかにした。どの形式のイミタンス変換器も負荷インピーダンスが特性インピーダンスと等しいときに最大効率を示す。最大効率は共振回路のQが100ならば98パーセントとなる。負荷インピーダンスが特性インピーダンスの1/3から3倍の範囲で97パーセント以上,1/4から4倍の範囲で96パーセント以上となり,広い負荷範囲に対応できることが明らかとなった。試作実験ではLCL形で最大効率98.6パーセント,ハイブリッド形では最大99.4パーセントを得て,電力変換器として広く応用可能であること示した。共振周波数と使用周波数の偏差は±5パーセントまで許せることが明らかとなった。 イミタンス変換器の他の応用例として,搬送車の動力源となる非接触給電装置の受電部に使用して定電流-定電圧変換を行った後に復調すれば,受動素子のみの構成で直流電圧源が得られることを示した。イミタンス変換器の出力を復調する技術は系統連系インバータにも共通で,相互に設計データを参照することができた。
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