研究概要 |
これまでの研究において,SF6ガス絶縁変圧器の内部障害の一つとして,予測保全上の問題となっている部分放電の発生を,スライドガラス基板上に真空蒸着した厚さ約8OÅの錫蒸着膜の透過率の変化によって,A.C.コロナ放電開始から約1.5時間で検出することができた。しかし,錫の膜厚が約80Åと薄く,真空蒸着する時の膜厚の再現性が悪いという問題点が残った。この問題点を解決するために,スライドガラス基板上に錫を比較的厚く,約300Å(幅28mm,長さ40mm)を蒸着した。この場合の検出量は透過率に変えて錫蒸着膜の電気抵抗値の変化をA.C.コロナ放電時間に対して測定した。膜厚約300Åで約3時間でSF6分解ガスの発生を検出することができた。次に,蒸着モニタの検出部に設置された水晶振動子に錫を蒸着しておき,SF6分解ガスによって錫がエッチングされ水晶振動子による発振周波数が初期の状態と変化し,分解ガスの検出の可能性があるかどうかの試みの実験を行った。水晶振動子に蒸着された錫は,A.C.コロナ放電によって生じる分解ガスによってエッチングされた。この現象は蒸着モニタのエッチング量の指示によって確認できたが,検出時間の正確な測定はバラツキが大きくできなかった。しかしながら,透過率の変化による検出法に引き続いて行った電気抵抗の変化及び水晶振動子の発振周波数の変化で検出する方法でも,SF6分解ガスの発生を簡易に検出することができたが,いずれの方法も実用化にはまだ多くの問題点が残している。
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