研究概要 |
本研究課題は,2年計画であったが,初年度のレーザーアブレーショャ装置の作製が計画から遅れたことにより,結果として超伝導体と圧電体の積層薄膜の完成までは至らなかった.平行してDCスパッタリング法によるバッファ層を用いたBiSrCaCuO薄膜の高品質化と,その薄膜と焼結体試料について超音波による磁束フロー起電力の測定を行い,以下に列挙するような成果を得,超伝導・圧電体積層薄膜の作製とピン止め特性測定に対する基礎データを得ることができた. 1. in situで積層膜の連続作製が可能なレーザーアブレーション装置によって半導体薄膜を作製し,雰囲気ガスとアニール条件を変化させることにより,結晶構造,薄膜の表面構造等がどのように変化するかを調べた. 2. 磁束に対する熱励起の影響が最も顕著に現れるBiSrCaCuO超伝導体の単結晶薄膜の作製条件の最適化を行った.SrTiO3単結晶基板上にバッファ層を挿入することによって転移幅が狭く,結晶性の良い薄膜の作製に成功し,この成果を雑誌に発表した.さらに,バッファ層の作製条件について最適化を行った. 3. 上記薄膜と,焼結法によって得られたバルク試料について,超音波を印加したことによって発生する磁束フロー起電力を測定し,熱励起型の磁束フローモデルによって解析を行い,積層膜にした場合の磁束フロー起電力測定の問題点を指摘した.この研究成果は現在投稿準備中である. 4.バルク試料については超音波の振動モードを変化させた時の測定も行い,磁束格子融解に関連しているとされている磁束格子のせん断弾性定数に関係した歪みを加え,発生した磁束フロー抵抗に特異な現象を発見した.
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