研究概要 |
1.静的評価 (1)ハードおよびソフト系チタン酸ジルコン酸鉛(PZT),チタン酸鉛(PT),チタン酸バリウム(BT)セラミックスで電気機械結合係数(kp)が極小をとる電界が分極電界から求めた抗電界(Ec)で、この電界で180°ドメインクランピング(DCと略)が起こる。又、BTのEcは0.1kV/mmと他材料の1/20〜1/10と小さかった。 (2)DCによるEcでの誘電率(εr)の極小、周波数定数(fcp)の極大は、ハード系正方晶PZT,ソフト系PZT全組成,PT,BTで主に見られた。一方、ハード系菱面体晶PZTでは観測されなかった。 (3)90°(71°又は109°)ドメイン回転によるεrのピーク、fcpの極小は主にハード系菱面体晶PZT,PT,BTで得られた。 (4)ハードおよびソフト系PZTの正方晶,菱面体晶でのεrの分極電界依存がドメインの180°反転と90°(71°又は109°)回転の分極電界依存から説明することが出来た。 2.動的評価 (1)ある電界強度のバイポーラパルスを繰り返し印加した時、残留分極量(Pr)が一度減少(過渡現象と名付けた)し、更に印加を繰り返すと、増加に転じる現象を初めて見出した。 (2)パルス電界に対する分極の強誘電・常誘電成分を区別して測定出来る方法を開発した。又、ソフト系PZTで電界に対する強誘電成分のピークが180°反転に相当することを明らかにした。 (3)バイポーラパルスの印加により、ソフト系ではほぼ飽和分極(DC分極)程度、ハード系では1/3程度の圧電性が容易に得られることが分かった(DC分極に代わるパルス分極法の開発)。 (4)バイポーラパルスの印加により非対称なP-Eヒステリシスが得られ、これがスペースチャージによる内部電界に起因していることを明らかにした。 以上のように、強誘電体ドメインを積極的に利用する強誘電体不揮発性メモリやドメイン制御セラミックスの基礎データを得ることが出来た。更に、配向分極(電荷の偏り)をもつDC分極処理済み圧電セラミックスへ高電界を印加した場合の脱分極とドメインの関係も解明出来、圧電セラミックスの電界に対する信頼性確保のための基礎データが得られた。
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