研究概要 |
本研究では,情報源符号化問題における多端子通信システムとして最も基本的なSlepian-Wolfシステム(互いに相関のある情報源出力XとYをそれぞれ別々に符号化し,共通の復号器でXとYを復号するシステム)を拡張し,双方向通信路を含む次のようなシステムに対する情報源符号化問題を取り扱っている. 対象としてるシステムには,2つの符号器fx,fyと2つの復号器gx,gyがあり,それらが独立な無雑音通信路により,fx→gx,fy→gy,gx→gyのように結ばれている.特に,gxとgyは双方向通信が可能であり,復号を行う前に任意回数の通信が可能である.このシステムにおいて,gxとgyがそれぞれXとYを,任意に小さい誤り率で復号可能となるために必要十分な4つの通信路(双方向通信路を2つと数える)の達成可能レート領域を理論的に求めることを目的に研究を行った. その結果,次のような成果を得た. 1. 上記通信システムの達成可能レート領域が,従来知られている研究成果からは導けないことを示すと共に,2つの復号器の間で,任意回数の双方向通信を許すことにより,どのような理論的取り扱いの困難さが生じるかを明らかにした. 2. 上記通信システムに対する達成可能レート領域の外界(outer region)と内界(inner region)を導出し,その理論的証明を与えた. 3. 上記の研究とは直接には関係していないが,関連した情報源符号化問題として,次のような研究成果も得られた. (a)有歪みユニバーサル圧縮符号の冗長性解析,(b)画像圧縮におけるBit Tree Weighting法の確立,(c)ブロックソートデータ圧縮法に対する理論的性能評価,(d)新しい再帰的な正整数のユニバーサル符号化法の提案とその理論的性能評価
|