研究概要 |
生物の知覚系・運動系の機能は進化によって階層的に積み重なって発達してきたため,仮に上位の階層,すなわち複雑な行動に失敗しても,より下位の階層の機能によるより単純な行動が発現することによって,生物の行動のフォールトトレラント性が確保されていると考えられる.人間を含む高等生物と同様に極めて多様なシーンを安定に認識できるコンピュータビジョンを開発するためには,視覚の単純な機能から複雑な機能へと,あたかも進化の道筋をたどるように機能の階層を積み上げる形で研究を進める必要がある. 本研究では視覚系の最も基本的な機能である物体追従の問題に注目する.物体追従の問題は,物体の存在の検出,位置の推定,大きさの推定というように,それ自体進化の階層性を内包している.より具体的にはカエル等の無尾両生類の捕食行動にともなう,移動物体の検出,追跡,3次元位置推定の階層的な計算論的数理モデルを構築し,実時間で動作するアクティブビジョンシステムを構成することを目的としている. 平成9年度はモデルの基本的な構成を検討した.モデル化の対象としては,カエル等の無尾両生類の捕食行動とそれに伴う視覚系の機能を取り上げた.この行動には多くの動物の視覚系が持つ基本的機能である,(a)移動物体の検出,(b)移動物体の追跡,(c)移動物体の三次元位置の推定,が含まれている.これらの機能を実現するための数理モデルを構築して,その有効性を評価した.
|