研究概要 |
主音源からの騒音を参照マイクロフォンで検出し,フィードフォワード適応制御器により目標点における騒音をキャンセルするように第2音源である制御スピーカから人工音を放射する適応能動制御システムにおいて,主音源,参照マイクロフォン,誤差マイクロフォン,制御スピーカがそれぞれ複数個からなるマルチチャンネル形の適応フィルタの安定性を保証するための理論的,実験的研究を行った.本研究によって得られた研究実績は,下記の通りである.(1)適応フィードフォワード制御器を構成する適応フィルタ群の係数を更新するマルチチャンネル形適応アルゴリズムとして,安定性を保証した新しい方式を導出した.この方法は,誤差マイクロフォンの誤差信号を直接利用する従来法とは異なり,これを修正した誤差信号を用いており,適応過程の過渡特性における不安定性を回避できることを理論的に明らかにした.また,不確かな入力項に対して,その上界値を利用した新しいロバスト適応アルゴリズムを与えた.(2)実装としてWavelet Packet変換を利用したサブバンド適応フィルタによる構成法を提案し,Wavelet Packet変換域における安定性を保証した新しい適応アルゴリズムを与えた.(3)主経路だけではなく2次経路の不確かな変動にも対応するために,2つの等価伝搬経路を実時間で同定し,この同定結果を利用して適応コントローラ群を実時間で更新する間接法を提案し,その有効性および適用限界について明らかにした.(4)上記の2つの伝播経路行列の実時間同定結果を利用して,適応アルゴリズムの誤差システムのダイナミクスを適切なタイミングで更新することにより適応システムの安定化を図ることができることを明らかにした.(5)主音源の騒音が周期性を満たす場合に有効と思われるプラグイン方式の適応騒音制御アルゴリズムを提案し,その安定性を明らかにした.(6)2個の誤差マイクロフォンと適応フィルタを導入したエアダクトにおける能動騒音制御実験,および5×6mの部屋における2つの主音源からの騒音を2点で能動騒音制御を行う実験を通して,本研究で得られた手法や知見の有効性を実証できた.
|