研究概要 |
本研究はエージェントの分散制約充足という基盤技術に関して、その推論技術の組織化に取り組み,それを計算機システムの検証および診断に応用してその有効性を実証したもので,その成果は大きく4つに分けられる. 1.ソフトウェアの検証問題として書換え系で記述されたプログラムの停止性検証を取り上げ,それを制約充足問題として定式化し,これを解くためのエージェントの組織を二分決定グラフで構造化する手段を開発した.その技術的ポイントは,各エージェントが単に独立して動作するのではなく,二分決定グラフにより組織化されることにより,情報交換による情報共有が可能となり,システムが効率的に動作することにある. 2.ハードウェアの故障診断のための推論を念頭に,機能仕様が等式で記述されることに着目して,等式系に対する完備化と呼ばれる推論技術による制約充足判定のマルチエージェント化を行った.マルチエージェントにより複数の半順序を平行して扱うことを可能にし,さらに独自の真偽維持システムを通して強調することにより,効率的な制約充足判定を実現する手段を実現した. 3.書換え型プログラムを扱うエージェントが自己認識に基づいて動作をするような構造的枠組みとして,書換え型言語へ自己反映計算メカニズムを導入した.ベースレベルとメタレベルのメッセージ交換プロトコルを設計し,エージェントの動作を公理論的に定義し,その操作的意味により計算のモデルを定義した. 4.エージェントの分散制約充足系および故障診断系を実装するためのソフトウェアアーキテクチャとしてJava言語に基づく分散オブジェクト指向アーキテクチャを提示し,ネットワーク実環境上で実際にシステムを構築し、典型的なテスト問題により評価して結果が期待されていたように良好であることを示した.
|