研究概要 |
航空機やSpace Shuttleに搭載の合成開口レーダデータや,我々の研究室で開発した偏波FM-CWレーダを用いて,ターゲットの散乱行列を取得し,偏波情報によってターゲットの分類・認識がどこまで可能かを研究目的とした。そのため,偏波散乱行列が与えられた場合,ターゲットの識別手法として考えたものは ◆特徴的偏波状態の利用 ◆Pol Enhancementの利用 ◆散乱行列の3成分分解と成分の構成比の利用 ◆Polarimetric Anisotropy係数の利用 ◆Polarimetric entropyの利用 である。 まず,実時間で動作するFull polarimetricなハードウエア構成と実時間動作確認,そして偏波校正について検討した。その結果,十分実用になる程度のレーダ装置を開発することができた。そして,偏波校正のために,線状ターゲットとしての散乱特性を持ち,かつ散乱断面積の大きなターゲットとしてParallel plate targetを提案して,その動作原理,その理論的裏付けとなるFD-TD解析を行った。FM-CWレーダの校正を通じて,非常に性質の良い校正用ターゲットを得ることができた。 次に,偏波FM-CWレーダを用いて実験室内で平板,コーナーリフレクタ,線状ターゲットのイメージングを行い,球,diplane,helixの3成分分解を実証し,ターゲットの識別に役立つことを示した。さらに,実時間の偏波FM-CWレーダで毎秒44個の散乱行列を取得し,分類が可能になった。 航空機や人工衛星のレーダを模擬した災害監視システムを念頭に置き,偏波情報利用の観点から建物倒壊の検出についてモデル実験を行った。建物倒壊につれて3成分分解結果がどのように変化していくかを観測した。またAnisotropy係数が使えるかどうかも検討した。 埋没物体探査への応用として,地中レーダに適用し,偏波成分と同時に3成分分解,Anisotropy,Polarimetric signatureがどのようにターゲット認識に役立つかを示した。 SAR画像解析では,2次元画像の全てのピクセルが散乱行列に対応していることから最尤法分類にしたがって特徴ベクトルを作り,その特徴ベクトルの成分として各偏波成分,Pol Enhancement,エントロピー,ウェーブレット変換などいろいろな成分を取り込み,識別,分類を行ってみた。その結果,偏波情報が分類精度向上に役立つことを示した。
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