研究概要 |
本研究では,人間の認識過程における脳内活動の変動状況に関する情報を脳波信号から抽出する手法を確立することを目的として,目標刺激が出現した時だけその回数を頭の中でカウントするよう被験者に義務づけた選択反応実験を行うとともに,その刺激応答脳波の識別に関する研究を進め,以下の研究成果を得た. 1.脳波信号処理手法の開発 脳波発生機構として,ARモデル,準ARMAXモデル,ニューラルネットワーク等を考え,それらのモデルに基づく特徴抽出・識別手法の開発を行うとともに,ウェーブレット解析,Blind Separation,非同期・同期性に着目した解析手法等の脳波への適用方法を検討した.更に,確率ニュートン法を利用した適応型クラスタリング手法の開発を行って,既存のDSLVQクラスタリング手法とともに,本実験で得られた脳波解析に適用し,同じ種類の刺激に対しても複数の応答波形パタンが存在することを明らかにした. 2.呈示刺激および瞬きの影響に関する考察 刺激呈示時間に関しては,500msec程度が脳波の識別を行う上で最適であることを明らかにした.また,瞬きの影響に関しては,P300に似た脳波変動として全脳波計測部位に現れることを確認し,識別に関する影響を調査する必要があることが明らかになった. 3.呈示視覚刺激に対応する応答脳波波形の識別 前頭部および頭頂部から得られる局所脳波を処理することによって,80%以上の判定精度で,呈示視覚刺激に対応する応答脳波の識別が可能であることを確認した.識別に適切な電極位置は被験者によって異なっており,これは,被験者によって脳波変動に現れやすい脳内活動自身が異なっていることを示唆しているものと思われる. 以上の研究結果により,呈示視覚刺激に対応する応答脳波をある程度の精度で識別可能であることが明らかになり,マンマシーンインターフェースとしての利用可能性を見いだした.
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