研究概要 |
人の抱く感情についての定量的評価を目指して,表情および脳波に着目した解析を行った。 表情については,これまでに行われていない感情の強さの評価を考え,表情(口の横の開き),心拍RR間隔および皮膚伝導水準を入力とし,面白い・楽しいという感情の強さを出力とする推定式を作成し,娯楽映画鑑賞時の推定精度を評価した。その結果,面白い・楽しいの強さの最大値を3とするとき,誤差約0.3で,推定が行えることを確認し,提案した手法の有効性を示した。 脳波については,快・不快感情における脳波の特徴を,従来から行われているα波の1/f^mゆらぎ,α波の強さ,および今回新たに提案するα波のパワーフローにより解析した。電極は前頭部左右2箇所(F_<p1>,F_<p2>),後頭部左右2箇所(O_1,O_2)の合計4箇所とした。1/f^mゆらぎについては,先行研究を改良した手法により解析し,F_<p1>のα波成分において,快のm>不快のmとなる有意な傾向が確認された。α波の強さについては,4個所の電極のいずれにおいても,快・不快における有意な差は見出されなかった。多次元自己回帰モデルに基づいて複数の電極間の脳波信号の流れを求めるパワーフロー解析においては,4個所の電極のうちF_<p1>,F_<p2>,O_2において,快よりも不快時に,パワーフローが増加する有意な傾向が見出された。これにより,新たに提案したパワーフローの,快・不快の脳波の特徴を表す指標としての可能性が明らかになった。加えて,パワーフロー解析を行うために,多次元自己回帰モデルにおけるホワイトノイズ源間の独立性について検討し,脳波の場合,10cm程度の距離をとった場合に,誤差の少ないモデル化が行えることを示した。
|