研究概要 |
本研究は飽水状態および不飽和状態のモルタルとコンクリートの透気特性と空隙構造の関係を明らかにすることを目的にしており,当該研究期間内に得られた知見をまとめると以下の通りである。 1. 飽水状態のモルタルにおいて,透気が観察される最小の圧力(透気開始圧)を段階的圧力を上昇させる実験により求めようとする場合,圧力の保持時間は透気開始圧力に殆ど影響を及ぼさないが、供試体長さが長くなるにつれて透気開始圧力は高くなる。 2. 飽水状態のモルタルの透気開始圧は水セメント比が小さくなるにつれて,また,水中養生材齢が長くなるにつれて高くなる。透気開始圧と水銀圧入法により測定された細孔径分布から得られるしきい細孔径の間には良い相関関係があり,透気開始圧を内部空隙構造の観点から定量的に評価することができた。 3. 水銀圧入法による細孔径分布の測定において凍結させた試料を用いることにより,不飽和状態の細孔径分布を測定することができた。その結果,乾燥状態のモルタルではある大きさ以上のほとんどの細孔から水分は蒸発し,蒸発する割合は各細孔径の細孔量にほぼ比例する。 4. モルタルやコンクリートなどのセメント硬化体の透気係数を空隙率,空隙径,空隙の屈曲度によって内部空隙構造と関連づけた。空隙率ではパーコレーション理論に基づいて空隙が連続し始める浸透しきい値を取り入れ,空隙径は100nm以上の空隙に関して透気の観点からの平均空隙径を用い,屈曲度は空隙率のべき乗の関数で評価している。この方法により水セメント比および乾燥状態の異なるコンクリートの透気係数を予測した結果,計算値は実測値をある程度の精度をもって評価することができた。
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