本研究では、コンクリートの引張軟化特性が未発達な状態から、巨視的ひび割れ開始点までの微細なひび割れの時間依存的な成長に関する有効な知見を得ることを目的に、荷重一定条件の3点曲げ試験とAE解析を行った。肩口開口変位の時間変化は、いずれの荷重レベルにおいても、ある限界点を境に変位速度が一定の定常状態から加速的な状態へと遷移する。AE源は、定常状態では空間的に偏りなく分布しているが(フラクタル次元D=1.85)、限界点を過ぎると破壊進行領域先端部に集中し始め(D=0.92)、破壊進行領域先端部で線状の分布構造になる。限界点以降の微視破壊の時間発展的な成長過程は、破壊進行領域先端部における不安定破壊の核形成過程であり、引張り軟化の初期状態と深く関わっていることが分かった。限界点を表す状態量を明らかにするために、多直線近似値法により引張軟化曲線を推定し、力学モデルとしてのクラック形成エネルギーと微視破壊による累積AEエネルギーに基づいて、引張軟化過程を定量的に明らかにした。はりの下部の領域では、引張軟化過程全般にわたり累積AEエネルギーの変化とクラック形成エネルギーの変化は同じ構造をしている。また、引張軟化の初期過程では骨材とモルタルの剥離破壊およびモルタルの破壊が卓越し、総AEエネルギーは各領域ともほぼ同じで、引張軟化初期に発生した総AEエネルギーの3/4に相当する。この結果は、新たに提案したAEエネルギーによって、破壊進行領域における微細なひび割れの成長過程を定量的に評価できる可能性を示唆している。今後、限界点を表すパラメータを累積AEエネルギーにより決定し、ぜい性度との関係について更に検討を加える必要がある。
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