研究概要 |
本研究は,材料内に複数のき裂が存在する時の,それらの相互干渉の影響を把握するための基礎的研究と位置づけ,き裂干渉問題の基本的なモデルとして,一様引張を受ける均質な線形等方弾性体帯板中央にある主き裂先端近傍に,主き裂と平行で長さの短い他のき裂(以降干渉き裂と呼ぶ)がある場合を想定し,き裂長さ及びき裂相互の位置関係が異なる時のき裂の進展挙動,すなわち,どのき裂先端がどの方向に進展するのかを解析した.き裂の進展はエネルギ解放率による破壊規準によるものとし,材料の破壊靭性値の等方性を仮定した.エネルギ解放率はE積分による有限要素解析により求めた. E積分は,準静的なき裂進展である限り,周知のJ積分とは異なり,非均質材料,非直線的なき裂,任意方向に進展した瞬間時等の場合でも,複数のき裂端を含む任意の経路で,経路独立な積分により,求めようとする進展き裂先端からのエネルギ解放率を得ることができるため,本研究のようにき裂の干渉問題には非常に有効である. 解析の結果,主き裂と干渉き裂とのき裂面に垂直方向の間隔が小さく,き裂面方向の位置が重なって干渉き裂が存在する場合には,干渉き裂の存在によって主き裂の進展が抑制され,主き裂が進展せずに干渉き裂先端に飛び移り進展する場合があることがわかった.また,干渉き裂の存在によって,主き裂の進展が最も抑制される位置関係は,主き裂と干渉き裂のき裂面方向の重なりが,干渉き裂長さに対して約75%の時であること,及び,干渉き裂の存在により材料の見掛け上の引張破壊強度が約35%大きくなる場合があることを明らかとした.
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