研究概要 |
寒冷地に位置する道路トンネルは,しばしば凍害を受け,交通確保や維持のために多大な労力を要求される。本研究は耐凍害設計法の確立を目指し,断熱材施工を行う場合を対象にして,その最適な材料の選択および厚さの算定法について検討を行ったもので,以下のように要約される。 1) 断熱材厚さの算出のための実用的な温度算定法の提示; (1) 外部断熱材施工において,材質の選択や厚さの決定が比較的簡単に行える温度算定式を準定常(周期的)熱伝導解析に基づいて導出した。なお算定式は,トンネル・地山系の断熱特性を支配するパラメータのみで表されたもので,設計を簡単に行え,また断熱特性を理解するのに役立つ。 (2) 温度算定法は,非定常熱伝導解析の結果との比較によれば,実用上は十分な精度を有している。 2) 地山の熱定数の同定法の開発; (1) 有限要素法と拡張カルマンフィルタの組合せによる,地山の熱定数(熱伝導率・熱容量)の同定解法を開発した。提示した解法は,地山の熱定数の安定した同定が行え,さらに覆工コンクリート・地山系の熱伝導状態の把握が可能である。 (2) 熱定数の同定解析を行うときは,観測値の得られた時期(季節)やトンネル建設地点の環境により熱伝達率や覆工コンクリートの熱伝導率の設定に考慮が必要となる。 (3) 地山方向の観測点が多い場合には,多層地山モデルを採用すれば各層の熱定数の同定が可能であり,地山の力学特性も間接的に推測出来る。 3) トンネル建設地点の温度推定法の開発; (1) トンネル建設地点の温度の推定を,その近傍の観測値の特性を利用する確率・統計論に基づくSemi-Variogramrを用いて試みた。 (2) この方法による推定値と実際に得られている観測値の比較は良く一致し,本手法の妥当性が確認された。従って,十分な精度で設計への適用が可能である。
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