研究概要 |
大阪湾と外洋をつなぐ紀伊水道で1995年夏に実施した結果,大量の窒素やリンが大阪湾へ流入していることが分かった.その量は大阪湾へ陸域から流入する量に匹敵する.本研究の目的は,大阪湾・紀伊水道を対象に窒素やリンの収支を現地観測から明らかにする.さらに,3次元バロクリニック流れモデルを用いて紀淡海峡周辺の流動特性を明確にする. (1) 1997年8月23日に神戸-貝塚を結ぶ大阪湾断面と友ヶ島水道でADCP・STDによる流動調査と水質調査,ならびに明石海峡において水質調査を実施した.物質の輸送には残差流が卓越していることから,半日周期の残差流輸送を算出した.大阪湾に流入するリン,窒素の陸域からの負荷量は年平均して20トン/日,180トン/日と見積もられている.実測結果より,リン・窒素が明石海峡から68トン/日,24トン/日流入し,友ヶ島水道から1トン/日,35トン/日流出していることがわかった.つまり,リンは大阪湾へ67トン/日流入し,窒素は大阪湾から11トン/日流出していることになる.一方,大阪湾の中央断面では,リンが5トン/日,窒素が16トン/日湾奥へ流入している.このことは,窒素の流入負荷の大部分が湾奥部に蓄積していることを示唆する.また,リンの場合も,陸域からの負荷量より大きな量が明石海峡および友ヶ島水道を通って運ばれていることから,窒素の場合と同様,湾奥部に蓄積していると推定される. (2) 播磨灘・紀伊水道を含む水平分解能1kmの大規模領域での3次元流れモデル計算で得た水位・流速の変動から半日周潮成分を求め,それを境界条件とした250m分解能の小規模領域の計算を行った.鉛直方向には10層位の分解能である.地形性の大規模渦の発生機構,残差流特性,流量収支,粒子追跡による流れの可視化,断面内の流動・密度構造を明らかにできた.
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