平成9年度は、水撃負圧部の気化圧到達による気化気体発生と気液混相流発生についての実験的研究が行なわれた。その結果、次のことが明らかになった。 1. この管路では流速約0.1m/sで気化圧(-10m)に到達し、気化気体が発生することが明らかになった。 2. 本実験では水道水を使用しており、含有空気がボイド率で0.0198含まれており、その影響で、-8m付近で気体湧出の影響が見られた。 3. 流速0.1から0.5m/s付近まで気化気体発生による影響が、第2波正圧部の水撃波形形状の変化に現れてくることが明らかになった。 4. 流速が1.0m/s付近になると、負圧部は発生気体が多量となり、伝播速度も遅くなり、第2波以後の負圧部にも気化気体発生の影響が出てくる。 5. 最大水撃圧は簡易式による理論値と良く一致し、流速に対し直線的に比例するが、高い方で実験値が大きくなる傾向を示した。 平成10年度は、連続方程式の密度にはボイド率で置き換えて、新たに水撃負圧部の気液混相流における運動方程式と連続方程式を誘導し、また、誘導した液体単相流の水撃圧の支配方程式である、双曲型非線形偏分方程式と気液混相流の放物型非線形微分方程式を上流差分法を用い、数値解析を行った。その結果と実験で得られた結果を比較検討することにより、次のことが明らかになった。 1. 非線形部の影響により、水撃波の最大部に減衰が発生する。この影響によって、水撃波の正圧部に右下がり波形が発生することが明らかになった。 2. 負圧部が気化圧に到達するために気液混相流が発生する。この影響によって、第2波正圧部の左下がり現象が発生することが明らかになった。 3. 以上の二つの減衰のバランスが取れた状態で、ベル型の水撃波形が発生することが明らかになった。 これらの研究成果は2編の国際学会、3編の国内の論文集、3編の学内の論文集、の計8編の論文として発表を行った。
|