研究概要 |
第一は湖への負荷源の同定と負荷量の推定,そして湖内における栄養塩類の収支に関するものである。負荷原単位法を用いた集水域の負荷の推定と湖内負荷との比較を行い,全窒素とBODは流域内での自然汚濁と湖内での内部生産量が大きいこと,時として成層化された夏期の深水層において硝酸態窒素が発現する非点源負荷の効果を見いだした。ついで,本課題以前の計測データを加え流動層と深水層における負荷量の推移を検討した。その結果,1993年は成層期の微流動層においてアモニア態窒素に加えて硝酸態窒素が発現していたが,その後時間経過と共に深水層における硝酸態窒素の発現量は小さくなり,1997年からは秋期の微流動層において硝化が認めらた。1993年は上流域にスキー場が開場した翌年であり,斜面や法面が植生で覆われて開発の影響が少なくなるの4年程度を要することが認められた。第二は底泥からの栄養塩の溶出と輸送機構の検討で,容器に底泥と湖沼水を封入し,湖底条件にて保存したバッチ試験を実施した。湖沼水を注入すると底泥は一時的に酸化されアンモニア態窒素と硝酸態窒素が発現するが,その後,酸化還元電位の低下にしたがってアンモニア態窒素の発現量が増加し,硝酸態窒素が減少傾向する成層期の湖底と同様の過程を確認した。また,成層期の湖底におけるアンモニア態窒素の発現量を与え,深水層におけるアンモニア態窒素分布を鉛直一次元拡散方程式によりモデル化した。さらに,夏期の湖底における硝酸態窒素の発現を降雨による密度流によるものと仮定し,還元中に流入する硝酸態窒素濃度の減衰に対する時間特性から脱窒素速度に関係する係数を算定した。第三に,湖内流動と水温計測から湖内における数年間の熱収支を検討した。成層期の降雨時には小野川流域からの負の移流熱により水温が低下するが,本湖では桧原湖からの正の移流熱が卓越するために流動層を通じて速やかに排熱されること,またそのことが擾乱した成層状態の回復に大きく寄与することなどの成果を得た。
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