研究概要 |
本研究は,地価データベースを地価下落局面へ延長した上で、土地バブルの性質を時空間的側面から検証することを中心に,背後にある地下形成メカニズムを3つの研究方向から多角的に解明しようとするものである。 第1の方向は,従来の時空間分析を延長し,地価の下降局面について拡散モデルによる現象再現性を検討することである。1976〜91年の16年間に関する地価データベースを,バブル崩壊後の96年まで延長するが,その過程で計算される21年次にわたる横断面地価関数のパラメータは,東京圏の地価形成パターンの変遷を要約している。そこで第1章では,データベースに1次元・2次元拡散モデルを適用し,得られた拡散パラメータを上昇局面のみに基づくもの比較する。 第2の方向は,時系列分析の拡張としての空間自己相関分析,或いは時空間自己相関分析による実証である。その前段階として,第3章では空間自己相関分析に関する文献調査を行い,検定や推定の方法をまとめる。第4章は前章の応用として,空間近接性に階層性がある場合の空間誤差自己相関モデルを展開し,川崎市の地価データへの適用した結果を報告する。 以上は,地価の時空間変動の現象面での実証を目的としていたが,第3の方向は経済主体の動学的行動に基づく地価形成の理論的説明である。そのための手段として,土地・金融の2種類の資産を考慮した重複世代(OLG)モデルを定式化し,地価の時空間的変化を説明することを考える。第5章ではそのプロトタイプとして金融資産のみを考慮したモデルを定式化する。
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