研究概要 |
有機物処理を主目的として設計された既設の標準活性汚泥法プロセスに窒素除去能力を付加する一つの方策として,ステップ流入式多段硝化脱窒プロセスへの変更がある.この運転方法の変更は,処理施設の増強等の必要が無く,経済的な処理場機能向上方法と考えることができる.そして,この変更には数学モデルを用いたシミュレーションが有効である.モデルを用いたシミュレーションには下水中有機物の分類が重要となる.特に,遅い速度で分解する有機物の挙動は,脱窒プロセスの速度に大きく影響する.また,難生物分解性溶解性有機物は処理システム内を素通りし,処理水中有機物レベルを定め,下水処理水の再利用施設における処理対象有機物となる.下水中有機物は,各家庭から排出に加え,汚泥処理工程からの返流水中有機物も重要となる. 本研究は,従来型の標準活性汚泥法をステップ流入式多段硝化脱窒法へと機能向上を図る場合に必要な運転操作方法設定のための方法論を提案することを目的に,汚泥処理系返流水中有機物の分類,・多段硝化脱窒プロセスの機能を表現する数学モデルを構築と実験結果との照合,・数学モデルを用いた処理場運転操作条件の検討を行った. その結果,汚泥処理系返流水中有機物について,・汚泥処理系返流水のうち,脱水ろ液には有機酸等脱窒反応に有用な有機物が含まれている,・しかし,遅い速度で分解する有機物の割合が大きいため,水処理系における反応速度は遅い,・処理水に残存することになる難生物分解溶解性有機物は汚泥処理単位プロセスの構成により大きく依存する,・生汚泥薬注脱水プロセスでは汚泥の凝集条件により難生物分解有機物量を制御できる,ことが明らかになった.また,窒素除去プロセスへの変更については,・ステップ段数はには最適値が存在すること,・好気槽溶存酸素濃度にも最適値が存在することが示された.
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