研究概要 |
酸性雨は、大気中に放出された人為と天然起源の硫黄酸化物や窒素酸化物が緩慢な化学反応で硫酸や硝酸に酸化され、拡散による希釈を受けて数日後に数百km〜数千km離れた地帯に降下するものである。1993年を例に取り、九頭竜川流域、ことに福井に到達する空気の流跡を逆Trajectory法により求めた。その結果、福井の大気は大陸高気圧の優勢な10月から翌年5月までは中国大陸から、また太平洋高気圧の優勢な7,8月には南海上から来ており、6,9月は季節の変わり目でほぼ全方位から来ることを知った。 東アジアにおける硫黄酸化物発生量を秋元等のデータより求め、Eliassenの拡散と化学反応式により福井に到達する酸性雨原因物質の各国の寄与を求めたところ、福井は日本海に近いために大陸の影響を強く受け、中国の寄与が60〜90%に及ぶが、7,8月は大陸の影響がほとんど無いことを知った。SO_2は人為によるものばかりでなく、火山の噴気にも含まれている。年間で見た場合九州では人為発生量より火山からのもののほうが多い。福井に影響を及ぼすのは九州の桜島、阿蘇、諏訪之瀬島の3火山であり、この方面から気団が福井に到達するのは主に7,8,9月である。1993年を例として火山噴気の福井における酸性降下物への寄与を求めたところ、最大で4割と見積もられたが、Plumeの中心が福井を通過するときは7割にも達しうることを知った。
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