研究概要 |
日本においては,発生する年間5,000万tの都市ごみの約75%が焼却される。焼却率は極めて高く,埋立ごみに占める焼却残渣の割合も高い。飛灰からは高濃度で有害重金属が溶出するため,埋立処分に際しては,法律で定められた4つの方法で安定化しなければならない。このような中で,湿潤させた飛灰を常温下で大気中に放置すると,有害重金属(鉛,カドミウム)が不溶化(飛灰の自己安定化)する現象を溶出試験(JLT13)より見出した。焼却炉の形式や排ガス処理方式が異なる全国の飛灰48試料について,この現象を確認した。この不溶化の過程において,溶出液中のpHやアルカリ度は低下した。30日間大気中に放置した飛灰のpH依存性試験(4≦pH≦13)からは,有害重金属の溶出量が原灰の溶出量よりも小さく,安定した化合物に変化していると考えられた。飛灰周辺の炭酸ガス濃度(0≦CO_2≦30%)が高いほど,有害重金属が早期に不溶化した。有害重金属の不溶化は,飛灰中のCa(OH)_2と大気中の炭酸ガスが反応して生成する炭酸塩に有害重金属が捕捉さるためであることが示唆された。 一連の研究を通して,重金属不溶化の機構として,次のシナリが考えられた。つまり,塩化鉛の形態で存在していた鉛は,飛灰を水混練することによって高アルカリ性のもとで溶解し,炭酸イオンや高濃度の硫酸イオンやと反応し不溶化する。この過程において,鉛を含有したエトリンガイトやカルサイトが生成し,鉛がマトリックスの中に取り込まれる。さらに,炭化処理を行うことにより,エトリンガイトは二水石膏やバテライトへと分解されるが,鉛は硫酸イオンや炭酸イオンと結合しているため依然と難溶解性であり,炭酸ガスの吹き込みとそれに伴うpHの低下により,PbSO_4の一部はPbSO_4よりも溶解度が小さいPbCO_3へと変化し,一層,鉛は難溶解性となることが考えられた。
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