研究概要 |
単層ラチスドームの座屈後の急激な耐力低下,構造全体の不安定な挙動が問題となる。近年の研究により,形状初期不整,荷重モードの不均一性がドームの座屈性状に大きく影響することが知られている。しかし,その分布形状に関するデータや形状初期不整と荷重不整が同時に存在するドームの座屈性状に関する研究はいまだなされていない。 本研究では,形状初期不整および荷重形式の違いが単層ラチスドームの座屈性状に与える影響を,弾塑性座屈解析および座屈実験を通して明らかにするものである。 まず,形状初期不整の分布形状をパラメータとして弾塑性座屈解析を行い,形状初期不整がドームの座屈性状にどのような影響を及ぼすかを明らかにし,その座屈耐力の評価方法を提案した。その結果,座屈時の固有モードと相似の形状で形状初期不整を与えた場合に座屈荷重の下限値を示し,また,弾性解析時ほど形状初期不整に対して敏感ではないものの,完全形において個材座屈を起こすドームほど敏感であることを明らかにしている。 続いて,スパン4.6m程度の模型を製作し,その座屈実験を行った。実験に先立ち,形状初期不整を計測し,その形状初期不整と様々な荷重形式がドームの座屈性状に与える影響を明らかにした。荷重形式は,風及び雪荷重を想定して,半載荷重,中央集中荷重および付加集中荷重とした。その結果,付加的な荷重が作用する点に形状初期不整が存在すると,座屈荷重が大きく低下することを明らかにしている。また,実験結果を,既往の研究で提案されている正規化細長比による座屈耐力評価法により整理している。ここでは,部材の断面形状に依存せず,また形状初期不整や荷重形式に依存することなく,単層ラチスドームの座屈耐力を評価できることを示している。
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