研究概要 |
軽量小型の多チャンネル常時微動測定システムを作成した.ハードウェアは,小型地震計,小型増幅器,カード型AD変換器,ミニノートパソコンの組み合わせからなっている.このうち,小型増幅器は自作し,その他は既成のものを利用した.感度特性は周期1秒程度まで速度に対して平坦なものである.電源は充電池を使用し,数時間程度の連続測定が可能である.地盤および構造物の常時微動測定用にそれぞれ3チャンネル用および12チャンネル用のシステムを作成した.重量は,3チャンネル用の場合には5kg,12チャンネル用の場合には12kg(ケーブル含まず)におさまり,容易に現場まで運搬できる. ソフトウエアとしては,各チャンネルの波形のモニター,記録の取り込みについては既存のものを利用した.スペクトル解析およびスペクトル・スペクトル比や波形の表示・印刷のプログラムについては,C++Builderを用いてWindows上で動作するものを自作した.波形は目的に応じて表示の拡大縮小などが簡単に操作でき,解析区間を簡単に指定してスペクトル解析ができるよう配慮した.また,解析されたスペクトルやスペクトル比も任意のスケールで描けるようにし,これにより,解析結果を理解しながら現場で測定を行うことが可能となった. 作成した測定システムを用いて,マニラ市および横浜市で地盤の常時微動を,横浜市で建物の常時微動を測定した.地盤の常時微動を測定する場合には10分程度で,構造物の常時微動を測定する場合には2時間程度で測定を完了することができ,現場で記録を確認しながら迅速かつ効率よく測定を行うことができることを確認した.また,測定結果に基づいて常時微動の水平動/上下動スペクトル比により地盤の震動特性を定量的に評価する手法についても検討した.建物内での測定記録の解析から,固有周期,減衰定数,振動モード形等の評価を行い,測定建物の振動特性を明らかにすることができた.
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