研究概要 |
本研究は,中低層鋼構造建築物の構造設計において,地震荷重のような常温環境の荷重に対する設計と火災に対する設計とが全く別に行われている現状から,これらを統合しかつ信頼性理論に基づく設計システムを開発することを目的としている。 研究の第2年度としては,前年度に収集・整理したデータをもとに火災に対する鋼構造骨組みの信頼性解析の定式化を行い,これに基づく解析プログラムを作成した。また,火災時の骨組み信頼度には,火災荷重(面積当たりの換算可燃物量)および耐火被覆の種類・量(厚さ)が大きく影響することともに,柱軸力比,梁上の荷重量が関係することを数値解析をもとに示した。そのため,柱軸力比,梁上荷重に関する統計的な資料を調査した。後者については日本建築学会荷重指針・同解説にある統計資料をベースに,部屋用途を考慮して設定するのが妥当であると判断した。 これとは別に,現行の構造設計による建築物の性能水準を調査し,積載荷重,地震荷重,風荷重,積雪荷重に対して,使用限界状態,終局限界状態に対応した信頼性指標値が2.0〜5.0の範囲にあることを明らかにした。火災荷重は,終局限界状態のみを考慮すればよく,対比して検討すべきと考えられる地震荷重,風荷重については50年間の信頼性指標値が2.0〜3.0である。 鋼構造建築物として具体的な骨組みを想定し,部屋の用途の異なるケーススタディを実施した。部屋用途としては,一般事務所系,技術事務所系,図書・倉庫系について検討した。検討結果は耐火被覆厚と信頼性指標値の関係曲線図として表現した。この図を用いれば,例えば信頼性指標値を2.0として設計するならば,火災荷重の小さい場合には,耐火被覆を施す必要がない可能性も出てくること等の部分的な知見を得た。
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