研究概要 |
1.1995年兵庫県南部地震の震度7の激震地域の一つである神戸市東灘区において,地震を経験し生き残ったコンクリートブロック塀(1,220件)の調査や1997年3月と5月の鹿児島県北西部地震によるブロック塀の被害調査を行った。これらの調査結果と兵庫県南部地震直後に同じ東灘区に設定した帯状調査区域で行った被害調査結果とを照らし合わせて,地震被害とブロック塀の構造との関係を検討した。その結果、倒壊した塀は縦筋と鉄筋コンクリート造の基礎とが十分に一体となっていないことなどから壁体脚部から転倒や大きく傾斜した塀が非常に多いこと,直交壁を有している塀のほうが直交壁を有していない塀よりも倒壊した割合は低いことなどを明らかにした。 2.既存ブロック塀の構造の実態を明らかにするため,大分市内の4つの市立小学校の通学路沿いにあるすべてのブロック塀1,032件に対して実態調査を実施した。その結果,建築基準施行令の構造規定を満足していた塀は僅か5件しかなく,壁体と基礎とが一体となっていないブロック塀が非常に多いこと,竣工後20年経ったブロック塀には老朽化などの問題が見られることなど,ブロック塀の施工時の構造上の不備と老朽化とにより既存ブロック塀の耐震性は極めて乏しいことが明らかとなった。 3.上記の神戸市東灘区,大分市および鹿児島県北西部における調査では,耐震補強されているブロック塀の調査を合わせて実施し,合計34件のブロック塀の補強方法に関する資料が得られた。 4.補強材とのボルト接合部周辺のブロックの耐力に関する載荷実験を行い,施工が容易で安価なボルト接合方法が利用可能であることを確認した。 5.耐震性に乏しい既存ブロック塀の補強方法と設計方法について検討した結果,壁体と基礎とが一体化されていない耐震性に乏しいブロック塀の補強方法としては,直交壁を利用とした補強方法は適用範囲も広く実用的でありかつ有効性が高いことを明らかにした。
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