研究概要 |
本研究の目的は急熱・急冷が可能な球状粒子を用いて,Y-TZPにおいて熱活性型と非熱活性型のマルテンサイト変態が存在することの確認と両者の変態キネティックスを測定することである.以下に本研究より得られた主な結果を示す. 1. 油中造粒および焼結により作製した500μmの球状粒子を用いると急冷・急熱実験が可能となり低濃度のイットリアを含む正方晶ジルコニア多結晶体(TZP)のマルテンサイト変態に関してより詳細なキネティックス測定実験が可能になった. 2. 一般に低濃度(1.7mol%以下)のイットリアを含むジルコニアは,高温からの冷却中に非等温的に変態するとされているが,急冷することにより高温相であるt相が室温まで持ち来されることが示された.これより、このマルテンサイト変態は熱活性化過程を含むことが明らかになった. 3. 急冷により室温まで持ち来された準安定t相は,等温保持中にマルテンサイト変態する.この変態はTTT線図上で上限450℃,ノーズ温度350℃のC曲線を描く. 4. 急冷により室温まで持ち来された準安定t相は、サブゼロ冷却によりバースト変体し,Ms温度は118±6℃であった. 5. 上記3および4の結果より,この準安定なt相は加熱・冷却条件の相違により等温変態と非等温変態の2つの異なったモードでマルテンサイト変態を起こすことが明らかになった.このような現象は従来のマルテンサイト変態機構のモデルでは説明不可能であり、この材料のマルテンサイト変態機構を明らかにするためには,今後さらに詳細な研究が必要である.
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