研究概要 |
Alは希土類元素をほとんど固溶せず金属間化合物を容易に形成することから、本研究ではAl-希土類二元系合金を取り上げ,先ずこの合金系での金属間化合物が、電気抵抗にどのように寄与するかを調べた。またこれら二元系に第三元素として遷移元素を添加することによっても同様の予備検討を行った。試料作成はDCマグネトロンスパッタ法を用い、AlにSc,Tb,Ho,Er,Tm,Yb等の希土類元素(RE)を1-7at%含むAl-希土類合金薄膜を作成した。電気抵抗変化は作成したままでは約20-40μΩcmと非常に高い値を示すが、250℃以上の熱処理温度で、主にAl_3RE(RE=Sc,Tb,Ho,Er)金属間化合物が析出し始め、それとともに電気抵抗も急激に低下した。さらに350℃以上の熱処理では、5μΩcm以下の純Al薄膜の比抵抗に近い値が得られた。熱処理後これらの合金系で純Alに近い抵抗値の薄膜が得られることは、主に金属間化合物析出によるAlマトリックス内からの不純物元素の排斥によると考えられる。またAl_3RE金属間化合物がAlマトリックス中に、多く析出したにもかかわらず、Al薄膜と同程度の低い比抵抗(高い電気伝導度)が得られる事実から、これらのAl金属間化合物自体も低い電気抵抗値を示すことが予想される。第三元素添加では、希土類元素と引力相互作用を持つ元素は金属間化合物を析出しやすく、低い抵抗値を示すが、反発相互作用を示す元素添加では金属間化合物は析出しにくく、抵抗値も高い値を示すことが分かった。これら金属間化合物の電気伝導度や化学的相互作用による金属間化合物の析出に及ぼす影響をより明かにするため、現在Al_3RE金属間化合物の電子状態密度の計算を準備中である。
|