研究概要 |
本研究では、アジ化ナトリウムを窒素源に、また、フラックスとしてナトリウム金属融液を用いて多成分系窒化物の合成を試みた。ニオブなどの金属シートでチューブ内を覆ったステンレス・スチール製チューブ内に原料の金属元素とアジ化ナトリウムおよび金属ナトリウムを封入し、このチューブをアルゴンガス雰囲気中摂氏750度で加熱した。加熱後、チューブ内のナトリウムフラックスを液体アンモニアを用いて取り除いた。このために必要な器具(H型セル)を作製した。この方法で、大きさ1mm以下の黄色で透明な薄板状の窒化ストロンチウムガリウムの単結晶が合成された。単結晶X線構造解析の結果、化合物が斜方晶系(格子定数:a=5.9579(12),b=10.285(2),c=9,557(2)Å)で空間群がPnnaであることを明らかになった。窒化ストロンチウムガリウムの結晶構造は、窒化ストロンチウムアルミニウムと同型構造である。各々のガリウム原子は窒素原子により四面体西配位されており、四面体の2つの稜が共有されることにより一次元鎖が形成されている。ストロンチウム原子は窒素原子に六配位されている。 ナトリウムフラックスを用いた多成分系窒化物の合成では、ストロンチウムよりもバリウムを含む系で、結晶が得られやすい傾向がみられた。また、希土類元素が入った系では、希土類元素の窒化物が単独で生成し、多成分系の窒化物を形成しにくいことが明らかになった。典型元素のAlやGaを組み合わせた系での実験においても、2元系窒化物が主生成相となる場合が多かった。この原因として、融液内の組成の均一性や元素による窒化反応の起こり安さや、各2元系窒化物の生成速度の影響などが考えられた。
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