研究概要 |
本研究期間に本課題に対して以下の知見が得られた。 1. 表面を研削したシリカガラス熱処理すると表面付近でOH含有量が低下するとともに構造欠陥の生成による吸収帯が生成した。これらの変化の程度は表面の研削状態および表面の曲率に依存する。 2. 研削表面の構造解析手段としてエキシマレーザー照射による発光特性およびそれに及ぼすエッチングの効果を調べた。エッチング前には1.9eV,3.2ev付近および2.9-2.7eVにピークを持っていた発光がみられたが,エッチングにより弱くなり2.4eV付近にピークを持つようになった。 3. 波長1064,532,355,266nmに対するシリカガラスのバルクレーザー損傷しきい値をしらべた。1064--355nmでは合成シリカガラスの損傷しきい値は波長の0.43乗に比例した。266nmにおける損傷しきい値は2光子吸収が関与するためにこれらの値からの外挿値の1/2程度であった。 4. エキシマレーザーおよX線誘起吸収に対してはVAD法で合成したOH基を40ppm含むシリカガラスは照射初期の吸収強度は比較的大きいもののその後照射を続けても他の材質に較べて吸収増加の割合が少ないことがわかった。この材料は現状で得られるシリカガラスのうち最も真空紫外透過特性に優れているため,真空紫外光用の光学材料として今後有望と考えられる。 5. シリカガラスのバルクおよび表面の構造および物性について計算機シミュレーションによる研究を計画したが,今回はプログラムの開発にとどまった。 本研究期間に得られた成果をもとに,今後エッチングの表面破壊強度や熱処理時の表面構造変化に及ぼす影響を発光による評価と比較しながら研究していく予定である。
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