研究概要 |
リラクサー型強誘電体薄膜を作製するための作製手段としてイオンビームスパッタ装置を立ち上げた.本装置ではアルゴンイオンガンからアルゴンイオンで金属ターゲットを照射してPb,Fe,Nb等の活性金属原子を基板上へとばし,さらに別の酸素ガンから活性酸素原子を基板上へ照射して基板上で金属原子の酸化反応を起こさせる.その際に,金属ターゲットは面内意回転式となっており,複数のターゲットを取り付けることができる.各ターゲットごとでの回転速度を変えることにより薄膜の組成をコントロールする.酸素ガンと回転式ターゲットを組み合わせて多元系金属複合酸化物薄膜を作製する.また,基板ヒーターのパワーを上げて,基板温度を500℃まで上げるような改造を行った.その結果,より低いパワーのヒーターを用いて作製した薄膜に比べて非常に緻密でかつ完全に(111)配向した高品質なPb(Nb_<0.5>Fe_<0.5>)O_3薄膜の作製に成功した.薄膜の緻密性はAFM観察により確認している.また,強誘電特性を測定した結果,誘電分極のヒステリシスループが強誘電状態のみならず,誘電率のピーク温度以上でも観察され,リラクサー型強誘電体薄膜が作製できたことが確認された.また,誘電率のピーク温度は100℃で,バルク材での値とほぼ一致した. その他に,バルク材のPb(Zr,Ti)O_3の強誘電分散についても調べ,分域壁の易動度を定量的に求めた.その結果,分域壁は菱面体晶中での方が正方晶中でよりも動きやすいことがわかった.
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