研究概要 |
Fe_3Alをベースとする擬二元合金(Fe_<1-x>M_x)_3Alについて,各種遷移金属Mで置換することによりD0_3相の安定性を制御し,さらに高温強度の向上を追究した結果,以下の知見が得られた. 1.M=Ti,V,Cr,Mn,Moで置換するとD0_3相はより強く安定化する.とくにM=VおよびMoについては,規則度の上昇ならびにD0_3ドメインの粗大化を観測している.電気抵抗測定により決定したD0_3-B2変態温度は組成とともに著しく上昇し,Fe_3Alに比べて400K以上も高くなる.このような変態温度の上昇は,置換原子のサイト選択に基づく電子濃度効果に起因している. 2.上記擬二元合金についてビッカース硬度試験を行い,変態温度の上昇にともなって高温強度が向上することを確認した.また,M=VおよびMoの合金について圧縮試験を行ったところ,極めて微量の置換によって室温での降状応力はFe_3Alの半分以下まで低下した.組成の増加とともに固溶硬化によって降状応力は増加していくが,M=Vではx=0.20付近から再び減少しており,規則化による軟化の影響が現れている.またM=Moでは,析出物が形成されるために析出硬化によって降状応力は著しく高くなる. 3.降状応力の温度依存症において,Fe_3AlではD0_3-B2変態温度(820K)付近に降状応力のピークが現れる.M=VおよびMoで置換すると,変態温度の上昇に対応して降状応力のピークがより高温側にシフトしていくことを明らかにした.また,歪速度敏感性は中間温度域ではほぼゼロで一定値をとるが,ピーク温度付近で急激に大きくなることが分かった.つまり,降状応力のピークの発現は,D0_3-B2変態にともなう規則度の低下に直接的に関係している.
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