研究概要 |
ビスマス系2212酸化物高温超伝導体(Bi_2Sr_2CaCu_2O_x)を拡散法により作製し、その特性と導体化について研究を行った。拡散法は、高融点の酸化物基盤と低融点の酸化物塗布材との拡散反応により、所望の超伝導相を得る方法であるが、本研究では、中空円筒(外径/内径:20/16mm,長さ:55mm)の内外周部に、厚さ約150μmの超伝導層を合成した。このBi-2212超伝導拡散層の臨界電流密度(Jc)は、4.2K,自己磁場下で,20,000A/cm^2を越えるバルク体としては高い値を示したが、これは、緻密で均質かつ配向した組織が拡散法により得られたためと考えられる。試料の全拡散層面積で換算した臨界電流(Ic)は、約4,000Aに相当することから大電流用の導体として有望である。また、本科学研究費補助金により設置した雰囲気熱処理炉を用いてアルゴン等の不活性ガス中でアニーリングすることにより、臨界温度(Tc)は、約10K上昇した。Tcの向上は、比較的高温域 特に40K以上の温度におけるJcの向上に寄与する。酸化物高温超伝導体を電流導体として応用する場合、超伝導バルク体と通電電極部との接触抵抗の低減が望まれるが、本研究では拡散対の塗布材側に添加した銀の試料表面への析出効果により、1-10nΩcm^2の極めて低い接触抵抗値が得られた。これは、1,000Aの通電に対してわずか1mW程度のジュール発熱に相当し、拡散法により作製するバルク導体のユニークな特長の一つである。 さらに、本研究ではビスマス酸化物(Bi_2O_3)と銅酸化物(CuO)の共晶組成である、Bi:Cu=2:0.136の融体中に高融点基盤を直接浸漬・被覆後、拡散熱処理を行う新しい拡散プロセスを試みた。生成した超伝導拡散相のJcは25,000A/cm^2と、従来の方法とほぼ同様の高い値が得られた。この様な低融点酸化物の融体中に高融点拡散基盤を浸漬して塗布する方法は、形状の制約を受けにくく、塗布時間も短時間で済むのでより実用的な方法と言える。
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