研究概要 |
Equi Channel Angular Extrusionによる Severe Plastic Deformation (SPD)法で平均結晶粒径200nm,直径20mmの純銅超微細結晶(UFG)を作製した.腐食試験には加工のまま(State 1)と,2種類の熱処理 (200℃, 3 min焼鈍;平均粒径200nmおよび500℃,30 min焼鈍;平均粒径20μm) を行ったState 2 およびState 3の3種類の試験片を用い,分極特性,定電位腐食試験,表面観察を行いそれぞれの腐食挙動を検討した.さらに,応力腐食割れ試験をSSRT法を用いて行った. その結果,State 1 の電流密度は粒界転位密度の低下ならびに粒内弾性ひずみを開放したState 2 のそれより低く耐食性が改善されることが明らかとなった.これは,State 1 は非常に高い粒界転位密度を有し,粒内に大きな弾性ひずみが存在する.したがって粒界,粒内とも高い腐食ポテンシャルを持つ.一方,State 2 は焼鈍による粒界転位密度の減少と,粒内弾性ひずみの解放により,両者の腐食ポテンシャルは低下するが,その差は逆にState 1 より大となり腐食溶解を助長するためである.また,State 1,State 2 共に粒界がアノード,粒内がカソードとなる微小局部電池を形成する.State 1の応力腐食割れ感受性はState 2,State 3 のそれに比べ著しく低くなり,これは上気腐食挙動と対応して均一な腐食被膜の形成と常温での粒界すべりの発生によるき裂発生の起点での応力開放が影響する.State 3では粒内での転位活動によりLomer-Cottrel不動転位が形成され,この部分への転位堆積により粒内応力腐食割れが優先発生することなどを明らかにした. なお,本研究の成果はScripta Materialia およびMaterials Science Forumに公表された.
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