研究概要 |
(1)西日本地区における構造物,文化財の腐食損傷および最近深刻化している森林枯れについて専門家から聞き取り調査した。文化財への影響では,奈良東大寺大仏殿の国宝八角灯籠(金めっきを施した銅製)が,ごみ焼却によって発生する塩素系物資による腐食のほか,硫黄酸化物による酸性雨腐食を起こしている。森林枯れでは,岡山県,広島県,山口県の高速道路沿いの松枯れが激しい。広島大学・中根教授によれば,酸性降下物が松に付着し,霧や夜露に溶け込んだ大気汚染物資が松の光合成機能を低下させ,衰弱した松は松食虫によって侵され易くなる。 (2)山口県各地において,雨水pH測定を実施した。山口大学工学部ではpH4.38〜6.25,秋芳町ではpH4.72,日置町ではpH4.38〜5.79であり,日本海側の日置町で採取した雨水の酸性化が顕著であった。 (3)人工酸性雨による腐食試験では,鉄鋼の酸性雨腐食に及ぼす太陽光によるさびの光触媒効果について検討した。太陽光の代わりに紫外線を照射した。さびた鉄では,紫外線照射によって腐食は25〜40%促進され,さびの量が増えるほどさびの光触媒効果が大きくなる。電気化学アノード分極曲線の測定からさびの光触媒効果が確認された。7日間腐食試料では,0mVまでの分極により0.3A/cm^2の光応答電流が流れる。これらの結果をもとに,鉄鋼の酸性雨腐食に及ぼす太陽光によるさびの光触媒効果の機構について提案した。
|