研究概要 |
蒸着膜,スパッタリング膜,メッキ膜といった数μmから数百μmの膜厚を持つ機能性薄膜の付着力を,物理的に意味を持ついわゆるはく離強度として正確に測定できる方法を確立し,機能性薄膜の信頼性向上を目的として研究を進め、以下の成果を得た. 1.薄幕のはく離試験を行うに当たって,薄膜の付着面に平行な力すなわちせん断力が発生しないように工夫した精密はく離試験治具を設計・製作し,薄膜のはく離試験中のはく離位置を正確に測定できるようにした.さらにはく離試験の際,薄膜に直接力を加えて引き剥がすと薄膜が破断したり,大変形を生じるので,有効なはく離強度を求めることはできない.そこで本研究では薄膜の上に適当な材質,適当な膜厚の補強膜を付けて引き剥がすことを提案し,はく離強度を評価したい薄膜に対してどのような材質どのような膜厚の補強膜を取り付けるのが適当かを明らかにした. 2.補強膜を取り付けた薄膜に関して,はく離荷重と荷重点変位から薄膜のはく離中の限界エネルギー解放率算定式を導出した. 3.ABS樹脂基板表面に無電解ニッケルメッキ膜を被覆した試験片を製作し,上記はく離試験にてメッキ膜のはく離試験を行った.その結果用いた補強膜に影響されない,いわゆるメッキ膜にはく離強度が合理的は限界エネルギー解放率の値として得られた.そしてこの結果から信頼性の高いメッキ条件を検討することが可能となった. 4.上記提案した試験法をコンクリート表面上に塗工した樹脂塗装膜のはく離強度評価にも適用した.得られた塗装膜のはく離強度は補強膜の種類・厚さ,さらにはく離位置に関係のない一定の値となり,はく離強度が定量的に求められることが明らかになった.
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