研究概要 |
視覚センサにより溶接中の溶融池の形状を測定し、またその固有振動数を測定して溶け込みを推定し、これを制御するシステムを構築した。また、溶接制御実験によりその有効性を示した。 (1) 溶接ロボットシステムの構築 溶接中の溶融池の画像をCCDカメラで撮像し,これをコンピュータに取り込んで種々のデータ処理を施し,溶融池の形状寸法を測定した後に適正溶接条件(たとえば溶接電流)を算出してこれを出力し、溶接条件の適応制御を行う基礎的なシステムを構築した。これを、実現するために、まず基礎的な3軸溶接ロボットを製作し,ロボット本体を完成させた。 (2) 溶融池形状の認識システムの構築 さらに、TIG溶接法による薄鋼板の自動溶接を想定して、CCDカメラによる溶融池の撮影を行い、その形状、寸法を計測するシステムを構築した。従来は、不明瞭な溶融池と母材との境界線の誤認識を防止して高精度な測定を実現するために、フィルタあるいは反射鏡などのハードウエアの適用やロバスト性向上のためのアルゴリズムの設定によりシステムの高度化を図った。さらに、これだけでは限界があるため、取得画像中に溶融池の形状認識のための複数の走査線を設定し、最小自乗法等を利用してそのプロファイルを推定する画像処理手法を適用し、その有効性を確認した。 (3) 溶融池振動の検出システムの高精度化 まず、溶融池の振動を安定して取得するため、取得信号中のノイズの低下、長周期的な溶融池の動きに起因するバックグラウンドの除去、サンプリングデータから振動数計算に用いるデータの切り出し法、データのFFTへの適用法など新しい多くの手法を提案し、これを組み込んだ溶融池の振動数検出システムを完成させた。さらに、これを現実の溶接実験に適用して、溶接中の溶融池の振動数と溶込状態に高い相関性があること、これをリアルタイムで検出して適正な値に制御することにより安定して薄鋼板の裏波溶接を実現できることを示した。また、溶融池の加振法として、パルス状のガスを吹き付けるアシストガス加振法を提案し、その実用の可能性を示した。
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