研究概要 |
硫酸塩浴,塩化物浴から定電流電解によって得られたCo析出物のメゾスコピック構造について,X線回折,SEM観察などを試みることにより以下のことがわかった。 1) 硫酸塩浴からのCo電析物は,高温,低電流密度の条件下で(002)面が優先配向し,低温,高電流密度の条件下で(110)面が優先配向した。この結果は,Pangarovが理論的に過電圧と結晶配向性の関係を予想した二次元核生成理論とおおむね一致するが,高過電圧領域で予想される(100),(112)面の優先配向は認められなかった。これは,高過電圧領域では電析の律速過程が電荷移動から物質移動へと変化し,そのため電析物が粉末状になったためと思われる。 2) 塩化物浴からのCo電析物は,すべての条件下で(110)面が優先配向し,過電圧により硫酸塩浴と同様の考察を試みることは困難であった。この原因としては,Cl^-イオンの特異吸着の影響が考えられる。 3) 硫酸塩および塩化物のいずれの浴においても,電析物は電極素地近傍においては電極の結晶構造を受け継いだエピタキシャル成長をするものと思われるが,膜厚の増加とともに結晶粒は素地の影響が少なくなり,電析条件に特有な配向性を有する組織に変化した。 4) Cl^-イオンは結晶配向性に大きな影響を与え,その効果はCl^-0.5mol/Lでも現れた。それ以上Cl^-イオン濃度を増加させても結晶配向性に大きな変化は認められなかった。 5) Co電析物の表面形態は,優先配向面と強い相関関係が認められた。
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