研究概要 |
軽量なアルミニウム合金を硬い非金属粒子で強化した複合材料は,特に耐摩耗性に優れた材料である.これらの特性が交通システム緊急制動装置用材用に求められている.この難加工性材料の成型には,鋳造法が最適と考えられる.しかし,溶湯への非金属粒子粒子分散は,その濡れ性の悪さから粒径が小さく総表面積が大きくなるほど困難を極める。 本研究は、アルミナ粒子分散アルミニウム合金スラリーの簡単な作成法として,粗大シリカ粒子をアルミニウム溶湯中に混入し,テルミット型の反応を起させ,得たアルミナ相を微細にアルミニウムシリコン合金溶湯中に分散させることを目的とした. 溶湯攪拌法により150μmのシリカをアルミニウム中に混入し,攪拌を続けることによって発熱とともにアルミナは投じたシリカの63vol%の体積しかないにもかかわらず,投入したシリカの形状を保つ,200nm程度の結晶粒がアルミニウム溶湯と混合した多結晶複合体であることが明らかとなった.このスリラーを所定の温度に保持しつつ攪拌を続けると,非常に高い界面エネルギーの存在によって速やかにアルミナ相の粒成長が起こる.この過程で1μmから2μmの独立した単結晶となり,これがマトリックス溶湯中に分散していくという現象が観察された.反応開始温度と攪拌保持温度を最適化することによって,150μmのシリカから平均粒径5μmのアルミナ粒子を約15vol%分散させた粒子分散材料を得ることができた.この材料の耐摩耗性は粒子分散強化によって,耐摩耗性アルミニウム合金として用いられている過共晶アルミニウム合金をはるかに越えて良好であることが明らかとなった.
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