研究概要 |
本研究では、臨界点近傍でのセルロース固体構造変化について、反応場の直接観察および反応後に再析出した生成物の解析を通して検討を行った。 1) ダイアモンド窓付き高温高圧セルによる直接観察 ダイアモンド窓付き高温高圧セル(ダイアモンド・アンビル・セル(DAC))に水とセルロースを仕込み、セル内の温度上昇とともにセルロースが変化する様子を観察した。セル内の温度が280℃以下では、セルロース粒子の大きさがわずかに小さくなる程度であったのに対し、セル内温度が300〜320℃になるとセルロース粒子が瞬時に消滅した。これはセルロースが高温水中に溶解したためであると考える。これより,これまでの研究において確認されている350℃付近でセルロースの加水分解反応速度の急激な増大の要因の一つとして,セルロースの高温水中への溶解による均一場の形成を挙げることができる。 2) 再折出物の解析 セルロース水スラリーを連続供給可能な流通式反応装置を用いて、反応温度250〜400℃、圧力25〜33MPaの亜臨界および超臨界水中でセルロースを分解実験を行った。250℃の高温水中で短時間処理した場合セルロースはほとんど反応しなかったのに対し、300℃〜400℃の亜臨界および超臨界水中では、セルロースは0.05〜8秒程度の短時間で消失した。その際に得られた液体生成物を数時間放置すると、白色の沈殿物が再析出した。この物質をFTIRで分析した結果、この物質の結晶構造は原料セルロースとほぼ同じであった。さらに、析出量が亜臨界水中で処理した場合よりも超臨界水中で短時間処理した場合のほうが多かった。これらの結果と前述の直接観察の結果より,高温水中へセルロースが溶解していることが示唆された。 また、XRDを用いて再析出したセルロースを解析し、結晶構造および結晶化度の評価も行った。 以上より、臨界点近傍の高温水中においてセルロースを処理するで、セルロース結晶繊維が合成できる可能性が示唆された。
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