研究概要 |
本研究は,安価で取り扱いが容易な酸素を酸化剤として,高難度酸化反応であるベンゼンの酸素化により,直接フェノールを一段で合成するための触媒開発および最適反応条件探索のための基礎データを得ることを目的とした.得られた研究成果は以下の通りである. 1. 水熱合成法で調製されたメソポーラス酸化物MCM-41(表面積,1052m^2/g;メソ細孔径,31Å)及びNaMCM-41(Al含有(Si/Al=55)MCM-41)を担体とした.銅種を含浸法(Cu/MCM-41),イオン交換法(Cu-NaMCM-41,Cu-HMCM-41)により担持したものを触媒とした.酸素圧1気圧で,還元剤としてアスコルビン酸をもちい,酢酸水溶液溶媒中で回分式反応器を使用した.比較のために,他の酸化物担体(SiO_2,等)に銅イオンを担持した触媒も調べたが,Cu-HMCM-41がフェノール生成に対して最も高い活性を示した. 2. 酸素圧4気圧で,シリカ担持バナジウム(V/SiO_2)触媒をもちいてベンゼン酸化を,上記の担持銅触媒の時と同様の反応条件で試みたところ,フェノール生成活性が担持銅触媒に較べて,かなり高くなることがわかった.フェノール生成活性は,酸素圧,反応温度に対して,最適値を持つことがわかった.このV/SiO_2触媒をもちいた場合,還元剤であるアスコルビン酸量が高い領域でフェノールがさらに逐次的に水酸基化され,ピロカテコールが生成することが認められた. 3. 担持銅(Cu-HMCM-41),担持バナジウム(V/SiO_2)触媒によるベンゼン酸化反応中において過酸化水素の生成が観測された.両者の触媒系において,ベンゼン酸化反応中における過酸化水素の蓄積量は,生成フェノールと密接に関係していることがわかった.
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