研究概要 |
保磁力400Oeの磁性粉としてγ-酸化鉄,それに酵素,β-ガラクトシダーゼを一緒にポリ-N-イソプロピルアクリルアミドゲル中に固定化した.径1mm,長さ1〜20mmのゲルを用いて2-ニトロフェニル-β-ガラクトピラノシドのガラクトースと2-ニトロフェノールへの加水分解反応を行なった.変動磁場(840Oe,2.3kHz)を印加すると,γ-酸化鉄のヒステリシス損によりゲルを磁気加熱することができた.ポリ-N-イソロピルアクリルアミドゲルは加熱すると収縮し,冷やすと膨潤する性質がある.その転移点が34℃付近にある.そこで磁気加熱により20〜38℃の範囲で温度変化させた.その結果,ゲルの収縮膨潤に伴い酵素のみかけ活性の変化が認められた. 保持力2.000OeのSr-Baフェライト粉(径0.4μm)を含むポリアクリルアミドゲル(径2mm,長さ10mm)を調製した.このゲルを1.4T静磁場におくと,磁性粉はゲル内で配向し,ゲル自身は磁気異方性を示すようになった.この磁気異方性ゲルは,200Oe,100Hz以下の変動磁場内におくと,振動したり,回転したりする.磁場がこれより強くなると,ゲル自体は運動しない.しかし,ゲル内の磁性粉は運動しているものと推察している.Sr-Baフェライトとともに酵素,β-ガラクトシダーゼ,をゲルに固定化し,また磁気異方性化したこの固定化酵素を用いて,いろいろの変動磁場の条件下で2-ニトロフェニル-β-ガラクトピラノシドの加水分解を行なったところ,酵素のみかけ活性は最大3倍にもなった.ゲル内の基質や生成物の拡散速度が,同じゲル内の磁性粉の運動により促進される結果,ゲル表面を通して移動速度が速くなるためと推察している.
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