研究概要 |
平成9年度の研究では,新しいクラウンエーテル型クロモイオノフォアの分子設計と,ミセル反応場の利用について検討を行った。界面活性剤にカチオン性の臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB),中性のポリオキシエチレン鎖を有するTriton X-100,およびアニオン性のドデシル硫酸テトラメチルアンモニウム(TMADS)水溶液を用い,DB16C5型クロモイオノフォアの発色応答挙動について検討した結果,アニオン性界面活性剤であるTMADSを用いた場合にのみ,クロモイオノフォアはNa^+選択的な発色挙動を示すことが明らかとなった。平成10年度の研究では,ピレニルアミド基を蛍光団とするDB16C5型蛍光プローブを新規合成し,ジオキサン水溶液中でのアルカリ金属イオンに対するの応答挙動を明らかにした。この化合物では,ジオキサン水溶液中でNa^+塩の添加により,短波長側のモノマー発光(387nm,408nm)が減少し,等発光点を伴って長波長側(473nm)に新しいCT性の発光が現れるRatiometricな応答が得られることを見出した。また,アミノB15C5骨格にピレン酪酸をアミド結合を介して導入したプローブは水溶液中では殆ど蛍光を発しないが,蛍光プローブ/γ-CD複合体の蛍光スペクトルは,Na^+塩添加では殆ど変化しないのに対し,K^+塩の添加により470nm付近に新たな発光が現れることを見出した。これはB15C5と金属イオンとの2:1錯体形成によるピレンニ量体の蛍光であると考えられる。本システムはバルク溶媒系とは全く異なる機能を有しており,水中でのK^+の高感度認識に利用可能であることが明らかとなった。
|